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Statement|ステートメント

 自然の中に身を置き、景色をぼーっと眺めていると、

その景色のなかに揺らぎや変化を感じて、きれいだなと思う。

そして言い様のない心の揺らぎを感じることがある。

この心の揺らぎをもたらすものを、私は「流れ」と呼んでる。

時間の概念は、直線的なもの(過去から未来といった一方向に進むもの)と循環的なもの(1日や1年など、周っているように感じるもの)がある。

全ての民族はこの二つの時間概念を併せ持つが、その比重は大きく異なる。

直線的な時間概念の発達には、開けた土地と、移動することでの景色の変化が重要であり、

循環的な時間概念が発達するためには、一ヶ所にとどまって、景色の移り変わりをサイクルとして見ることが重要である。

島国であり、国土の大半が同じ気候帯に属している日本は、

循環的な時間概念がより発達している。

 

私の感じる「流れ」もまた、この日本の循環的時間概念のうえに成り立っているように思う。

澄み切った青空、夜道を照らす満月、目を奪われる鮮やかな花々の色。

どれも感動を覚えるのにこと欠かないものたちで、

確かに私の視界の中心、そして絵の中心にいるのは彼らである。

 

しかし、私が心動かされ、表現を試みるのは、

風景を見た1つの「瞬間」ではなく、

刻一刻と変化する目の前の景色の一瞬一瞬の積み重なりであり、

つまり「流れ」なのである。

About Making|制作について

​ エブルとは、粘性のある水溶液に絵具(顔料と牛の胆汁を混ぜ合わせたもの)をブラシや鉄筆を用いて浮かべ、紙や布などの吸水性のある支持体に移しとるトルコの伝統技法の一つです。ヨーロッパのマーブリングの元となったエブルは、鮮やかで多彩な色と、櫛目模様や矢羽根模様、渦巻き模様といった人工的な模様が特徴です。

 一方、日本では古く、平安時代頃から墨流しというエブルとよく似た技法が伝わっています。墨流しは、絵具を浮かべる液体に真水を用い、扇子や団扇で風を送ることで、有機的で自然な模様を生み出すことができます。日本では数百年間にわたって、墨流し模様を施した料紙を、書や画、浮世絵などの支持体として使用してきました。しかし、墨流しでは粘性のない真水を用いているので、使用できる絵具に大きな制限があります。伝統的な墨流しで使用される絵具は、墨、藍、紅の三つの色しかありませんでした。

 

 私は2022年からの一年間のトルコ留学の際に、Living Human Treasureにユネスコから認定されたHikmet Barutçugil(1952-)よりエブルの手解きを受けました。留学からの帰国後、私は本格的にエブルを自身の絵画制作に取り入れるようになりました。絵具を浮かべる水溶液の濃度や使用する顔料、移しとる支持体の観点から改良を試み、現在は、有機的でありながら多彩な色の模様を画面に取り入れた作品を制作しています。

伝統的なエブル模様(櫛目模様)

IMG_1259.jpeg

水面に浮かぶ模様

IMG_3756.jpeg

極薄の和紙に模様を移しとる様子

Profile|プロフィール

Education|経歴

 

1995年   栃木県 出身

2020年   東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻 卒業

        東京藝術大学美術研究科芸術学専攻美術教育研究分野 入学

2022年   トルコ共和国ミマール・シナン美術大学 一年間の交換留学

2024年   東京藝術大学美術研究科芸術学専攻美術教育研究分野 修了

     

現在      東京藝術大学美術学部美術教育研究室 教育研究助手

​Exhibition|展示歴

2024-   「伊藤寛人 作品展-色香-」 美岳画廊

        第2回 コーポレートアートエイド京都

        星月夜 Gallery And Links81

        船出展 美岳画廊

        第72回 東京藝術大学卒業・修了作品展 東京藝術大学大学美術館

2023-   未来展 日動画廊

        船出展 美岳画廊

       

2022-   6th ART THESSALONIKI INTERNATIONAL COMTEMPORARY FAUR (ギリシャ)

2021-   個展「BOUNDARIES」 GalleryTK2

        朋芽展 松坂屋上野店 美術特設会場

        真夏の夜の夢 GalleryTK2

     

2020-   第68回 東京藝術大学卒業・修了作品展 東京都美術館 

        未来展 日動画廊

2019-   第73回 栃木県芸術祭美術展 

        朋芽展  松坂屋上野店 上野が、すき。ギャラリー

        アートオリンピア2019 入選

2018-   グループ展「あか、あお、きいろ展」 Gallery汐花

        第72回 栃木県芸術祭美術展

        学生選抜展 Gallery美の舎  

2017-   第71回 栃木県芸術祭美術展  

        全国美術・教育リサーチプロジェクト 東京藝術大学大学美術館

Awards|受賞歴

       「第2回 コーポレートアートエイド京都」 入選

​       「第68回 東京藝術大学卒業・修了作品展」 取手市長賞

       「第72回 栃木県芸術祭美術展」 芸術祭賞(大賞) 

       東京藝術大学 安宅賞

       「第71回 栃木県芸術祭美術展」 U25賞

       「学生選抜展 Gallery美の舎」 優秀賞

         

© 2024 by hiroto ito

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